日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の徹底解説(5/7アップデート)
コロナショックもいよいよ長期的に対応が必要な状況になってきました。
政府の発表のとおり、ウィルス封じ込め対策を徹底的に実行する必要があります。
経営者の観点からは、
① 今日から出ていくお金を最小限にとどめること
② 最悪のシナリオを数字に起こし、具体的に対応策を準備しておくこと
③ これから先の中長期的な企業戦略を見直すこと
を最優先に検討する必要があります。
お店を開けていても、営業を続けてもいい答えは出ないと思います。
今は現状を見直し、向こう1年から3年の新たなシナリオをしっかり検討する時期です。
Time is MONEY!今のうちにしっかり対応策を考えましょう。
前置きが長くなりましたが、今日は日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を掘り下げます。当事務所の関与先でも、4月1日現在、すでに15件以上の融資のお手伝いをいたしました。その結果を踏まえ、融資制度の詳しい解説を交えご紹介します。
日本政策金融公庫(以下、「公庫」)のHPの融資一覧をご覧ください。公庫は政府系の融資機関で、これらを「制度融資」といい、国の政策を反映した融資となります。こんなにたくさんの制度融資があったんですね。スクロールしていくと、下の方に新型コロナウイルス感染症特別貸付(以下、「コロナ特別融資」)が出てきます。
さて、今回のコロナ特別融資ですが、概要は日本政策金融公庫のHP、または、コロナ関連融資案内をご覧ください。以下、概要とその解説です。
また「新型コロナウイルス感染症特別貸付等に関するQ&A」が公開されています。申込期限、現行の融資制度からの借り換え、または、再度の融資申込など、よくある質問が掲載されていますので参考にしてみてください。
1.融資を受けられる方
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方
〇最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方
〇業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合は、最近1ヵ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少している方
(1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高
(2)令和元年12月の売上高
(3)令和元年10月から12月の平均売上高
公庫融資の場合は、創業融資を除き社歴(事業歴)が2期以上あることが基本条件ですが、今回の融資は、社歴が3か月以上あれば、個人法人を問わず審査の対象になります。
社歴が1年1か月以上(すなわち、前年同月がある方)は、審査書類が少なくて済みます。
それ以上社歴がない方は、事業内容の説明、売上減少の根拠の説明ができる書類が追加となります。とはいえ、普通の創業融資に比べ、緊急融資である性格上、難易度はそこまで高くないよう設定されていると思います。しかも、現在受けている融資があって「これ以上融資は受けられないかも」とという状況でも、企業の資金繰りを補填する国策という目的なので、比較的受けやすい融資です。
※なお、以下のようなケースで、事業主としての主体性、独立性が確認できない場合、実態が見えにくい場合、融資が受けられないケースもあります。
(1)雇い主に雇われている従業員の「給与」と同等の雇用関係で、形式上「報酬」として受け取っている場合
(2)雇い主との間に契約書の締結がない、または請求書の交付がない場合
(3)雇い主が親族で実体がない、または過大な報酬を受けている場合
2.資金の使い道
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う社会的要因等により必要とする設備資金および運転資金
運転資金の使途は幅広く、仕入・材料の購入、買掛金、手形の支払いはもちろん、人件費や販売管理費など営業に関係のある支出である「諸費」の支払いに幅広く使えます。ここが融資額を多く引き出すポイントとなります。
3.融資限度枠
国民生活事業(中小零細向け)では、設備資金、運転資金合わせて6,000万円まで、中小企業事業(製造業中心で比較的に融資金額の多い融資)は3億円まで。
融資金額は大きい方がよいのですが、中小企業事業は、審査の過程や返済について、銀行との折衝も含まれてきますので難易度は上がります。ここでは、国民生活事業の融資枠6,000万円について解説します。ちなみに、この融資枠は、「特別融資枠」です、通常の融資枠とは別枠です。
4.返済期間(うち据え置き期間)
設備資金 20年(据え置き期間:5年)
運転資金 15年(据え置き期間:5年)
中小零細向けの国民生活事業の融資枠は少なく、返済期間も長くて7年といった感じでしたが、今回のコロナ特別融資は、コロナウイルスの影響が長期にわたる可能性が高いことと、中小企業にとっては比較的融資限度枠が大きい6,000万円となっていますので、返済期間の設定が長いです。
また、借入元本の返済を据え置いて、利息だけ支払う返済の据え置き期間が長いことも特徴的です。これは、融資の性質が、「コロナウイルスの影響で資金繰りが厳しい企業に運転資金を補填する」ためのもので、資金繰りが厳しいであろう期間は元本返済を猶予する目的だとのことです。おおむね、1年くらいの据え置き期間が一般的な選択だと思われますが、最長5年間の据え置きができますので、経営状況に応じた判断が求められます。
このコロナ特別融資の特記すべきポイントは、「いつまとめて返済をしてもかまわない」ということです。たとえば、1,000万円を10年返済、3年間据え置きで借りた場合、3年間利息だけ払い、3年を過ぎてまとめて1,000万円返済が可能ということです。
当事務所の関与先で、「融資枠がない、返済済部分だけの融資だ」とか、「繰り上げ返済はできない」と言われたという声を複数いただいております。これは、コロナ関連融資であるが、セーフティネット融資など、このコロナ特別融資以外の融資枠で融資を受けている可能性が高いです。このように、借主に対する説明が不十分であったケースもありますので、コロナ対策融資でも、どの融資枠なのか明確に確認する必要があります。
今回のコロナショックの影響は長期間にわたることは疑いの余地がない状況です。企業防衛の観点から、この制度をうまく利用して、会社により多くの手持ち資金を蓄えておくことが重要だと思います。
5.利率(年)
公庫の設定する基準利率(基準となる金利)ですが、ただし、3,000万円を限度として、融資後3年目までは基準利率-0.9%で実質無利子になります。「実質無利子」の意味については後ほどご説明します。4年目以降の返済金利は基準利率となり、3,000万円を超える部分については、基準金利のみが適用となります。(国民生活事業枠)
この基準利率は、災害の融資制度に適用される基準金利で、制度融資の中でも低い利率が適用されているのでありがたいですね。融資金額、返済期間によっても若干違いがありますが、4月1日現在の基準金利は以下の通りです。
返済年数 | 基準金利 | 返済期間 | |
3年以内 | 4年以降 | ||
9年まで | 1.36 | 0.46 | 1.36 |
10年 | 1.37 | 0.47 | 1.37 |
11年 | 1.38 | 0.48 | 1.38 |
12年 | 1.40 | 0.50 | 1.40 |
13年 | 1.42 | 0.52 | 1.42 |
14年 | 1.44 | 0.54 | 1.44 |
15年 | 1.55 | 0.65 | 1.55 |
※3000万円以上の部分は基準金利です。 | |||
※令和2年4月現在の基準金利です。月ごとに変わります |
以下、令和2年5月1日以降の基準金利です。
返済年数 | 基準金利 | 返済期間 | |
3年以内 | 4年以降 | ||
11年まで | 1.36 | 0.46 | 1.36 |
12年 | 1.37 | 0.47 | 1.37 |
13年 | 1.39 | 0.49 | 1.39 |
14年 | 1.41 | 0.51 | 1.41 |
15年 | 1.42 | 0.52 | 1.42 |
※3000万円以上の部分は基準金利です。 ※実際の金利については公庫担当者へご確認ください |
これを踏まえ、わかりやすく説明すると・・・融資金額のうち、
① 3,000万円までの部分
当初3年間:基準利率-0.9% すなわち、1.36%-0.9%=0.46%
3年経過後:基準金利1.36% ※3000万、7年返済の場合
② 3,000万円を超える部分:基準金利1.36% ※3000万円、7年返済の場合
※基準金利は定期的に0.02%程度変わります。融資金額、期間によって多少違います。
すなわち、3000万円の融資で9年返済の場合、3年間は、0.46%の低利で融資が受けられます。普通の会社の通常の融資金利は、2%を超えている時代なので非常に有利です。
※3年間「実質無利子」とは?
正式には、「特別利子補給制度」といい、コロナ特別融資を受けている方で、次の条件に当てはまる場合のみ、実質無金利で融資が受けられます。(実質的な無利子化融資のご案内参照)
① 個人事業主の方
要件なし
② 法人
売上5%減少の基準となる月、またはその月以降の2か月(合わせて3か月)の期間で、いずれかの月での売上の減少が、前年または前々年の基準となる月の売上高と比較して、小規模事業者※の場合は15%、それ以外の中小企業者は20%減少している月がある場合
※小規模事業者とは、卸・小売業、サービス業は常時使用する従業員 が 5名以下、それ以外の業種は20人以下。中小企業者とはそれ以外をいいます。
しかしながら、「実質無利子」という表現が示す通り、ただの「無利子」ではありません。コロナ特別融資の料率のとおり利息を支払った後、当初3年間で支払った利息のうち、別途決定される実施機関からその金額が補給(キャッシュバック)されることになっています。いつ、どこから支払われるのかまだ決まっていません。したがって、特別利率の安い利息とはいえ、一度は支払って、最長3年後以上経ってから戻ってくる仕組みで、その間にキャッシュバックに何かしらの条件が付く可能性はあると思われます。
6.担保
今回の特別融資は無担保、無保証の制度となっています。連帯保証を付けることや担保を差し出すことはできません。
融資申し込みの際に、融資申込書の下半分に担保・保証の選択を記入する欄がありますので、「担保を不要とする融資」の欄にチェックを入れ、「経営者保証免除特例制度(法人代表者の方の連帯保証を不要とする制度)を希望する」にチェックを入れてください。
最後に、この融資制度は資金調達にはかなり便利な融資制度ではありますが、借りたものは返さないといけませんので、事前にしっかりシミュレーションを重ね、計画的な借入・返済を心がけてください。
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